フィリピンの裁判所は15日、サイバー名誉毀損罪で起訴されたジャーナリスト、マリア・レッサ被告(56)に有罪判決を言い渡した。同被告はロドリゴ・ドゥテルテ大統領に対する批判的姿勢で知られており、裁判は同国の報道の自由をめぐる試金石として注目されていた。 フィリピンではジャーナリストが脅迫されることが珍しくなく、レッサ被告の裁判は国内外の関心を集めていた。 レッサ被告は罪状を否認し、政治的な動機に基づく訴追だと主張していた。 レッサ被告に加え、同被告が設立したニュースサイト「ラップラー」の元記者1人も有罪となった。 <関連記事> マニラで逮捕のニュースサイト編集長、保釈 政府に批判集中 フィリピン警察の麻薬摘発で32人死亡 1日で過去最多 フィリピン大統領選、ドゥテルテ氏が勝利 犯罪取り締まり強硬派 2人は上訴審まで保釈が続く。有罪が確定した場合、禁錮6年の刑を受ける可能性がある。 報道の自由を推進する団体はこの裁判について、ドゥテルテ大統領に対する批判の封じ込めを狙ったものだとしている。 一方、大統領と支持者は、レッサ被告とラップラーを「フェイクニュース」だと非難している。 レッサ被告は米CNNの元ジャーナリストで、2012年にラップラーを設立。ドゥテルテ政権と、同政権が進める残忍なまでの麻薬撲滅戦争を批判してきた。 「証拠を示さなかった」 裁判は、ビジネスマンのウィルフレド・ケン氏と元裁判官が癒着があるとした8年前の記事をめぐって争われた。 この記事が出て4カ月後の2012年9月、「サイバー名誉毀損」法が施行。物議を醸す中、同法で訴追された。 検察は、2014年に問題の記事のタイプミスが修正されたことから、記事は同法の訴追対象になると主張した。 この日の判決でライネルダ・モンテア裁判官は、ラップラーがビジネスマンに関する記述を裏付ける証拠を示さなかったとした。 また、判決は法廷での証拠に基づいたものであり、報道の自由は名誉毀損の免責理由にはならないと述べた。 人権団体が非難 フィリピンでは報道の自由は保障されているが、米人権団体「フリーダム・ハウス」は、フィリピンはジャーナリストにとって非常に危険な国だとしている。 「国境なき記者団」は、「地元政治家に雇われることもある私兵がジャーナリストの口を封じ、何の罪にも問われていない」としている ドゥテルテ氏に批判的な人々か